Aufforderung zum Reiten 乗馬への勧誘 2



 
「...一体全体、君達は何をやっているんだ?」

彼女は奇想天外な姿勢のまま、人間とは思えない角度でくるりと首を回した。

「あ、あおとあ!今ふぁきあに乗馬を教えてもらってるんだよ」
「見ての通りだ。それはともかく、ふつう、日常会話で『一体全体』なんて言うか?」

手綱を掴んだまま腕組みして立っている男が、うっとうしげな視線を投げてきた。が、もちろん、そんなことでひるむような僕ではない。

「大きなお世話だ。ところでふつうと言えば、僕はそれほど乗馬に詳しいというわけではないが、ふつう、乗馬と言うのは、鞍の上に座ってやるものじゃないのか?」
「ふつうはそうだな」

ふぁきあがほらみろと言いたげな表情をあひる君に向ける。その彼女は、手足が絡まったような奇妙な格好で鞍にぶら下がって、上気した頬を膨らませた。

「だあってぇ〜。ふぁきあが教えてくれた通りにやってるはずなのに、どうしてもこんがらがっちゃうんだよ」
「お前はバレエをやってるくせに、バランスが悪過ぎる。鞍に乗るくらい、誰だってできるぞ」

というか、ふつうの人間にはこんな体勢になることは不可能だろう。

「そんなこと言ったってさ、ふぁきあは注文が多いんだよ。右足を上げろーとか、左足を伸ばせーとか、上体を起こせーとか、いっぺんに言われると頭がこんがらがっちゃう」
「体をトータルにコントロールするのはバレエの基本だろう」
「そりゃそうだけど」
「...もし君達がサーカスの練習をするつもりなのでなければ...」

こほんと咳払いして注意を引く。

「ふぁきあ、とりあえず君が動きをサポートしてあひる君を鞍に乗せてやれば、やり方がわかるんじゃないのか?」
「そうだよね!」
「昨日まではそうしてた」

...なるほど、今日が練習初日ではないわけだ。

「そうそう、知ってるあおとあ?馬って長い間乗ってると、お尻とか太腿の内側とか膝とかが痛くなってくるんだよ」
「話をそらすな。それにお前のは明らかに柔軟性不足だ。とにかくまずは一人で鞍に乗れるようになれ。一度降りて、最初からやり直しだ」
「あー、うん、そうしたいんだけど、すっかり絡まっちゃってて、ぐ、わわわわ...!」
「あひる!」

...

「いったぁ...あっ、ごめん、ふぁきあ!だいじょうぶ?」
「...なわけないだろ。さっさと俺の上からどけ」
「あ、うん」

それ以上コメントする気にもなれなかったので、僕は首を振りつつ立ち去った。
 
 
 


 

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