激しい風雨の音。時々雷鳴が混じる。納屋の中は荷物が除けられて、わずかな空間が作られている。横になったあひるから少し離れ、ふぁきあも休もうとして、ふと気になって尋ねた。

「大丈夫か?」
「うん、あたし、雷は別に怖くないんだ」

あひるは横になったまま顔だけふぁきあに向け、元気良く答える。

「そうか」

ふぁきあがそう言って体を横倒えた途端、近くに落雷して轟音が響く。

「わぁあああっ」

あひるは耳を押さえて丸くなる。

「怖くないんじゃなかったのか」
「びびびびっくりしただけだもん。怖かったんじゃないもん!」

握り締めた手を顔の前でぶんぶん振って言い訳するあひるに、ふぁきあは唇の端で笑いながら相槌を打つ。

「ふうん」
「ほんとだって、・・・」

あひるがさらに弁解をしかけたところで、風で飛ばされてきた何かが扉にぶつかって大きな音をたて、扉が揺れる。

「・・・!」

びくっと身を竦めて、ふぁきあの向こうの扉を見るあひる。ふぁきあは黙って目の端であひるの様子を見ている。あひるが視線を下げてふぁきあを見ると、ふぁきあはついっと完全に目を逸らした。

「あの、ね・・・」

ふぁきあが返事をしないので、あひるは情けない声を出す。

「ふぁきあぁ・・・」
「なんだ?」

笑いがこぼれそうになるのを噛み殺して、ふぁきあはぶっきらぼうに返事する。あひるは遠慮がちにおずおずと尋ねる。

「も、もうちょっと近くで寝てもいいかな?ここ、狭いし・・・」

(近くに来たって狭いのは変わらないだろう)

とふぁきあは思ったけれども、放っておくのも可哀想なので、短く肯定の言葉を口にする。

「ああ」

あひるは嬉しそうに跳ね起き、飛んできて、すぐ隣に横になり、ふぁきあの腕に抱きつく。ふぁきあは焦って顔を赤らめる。

「おい、近くって、そんな近くじゃなくても・・・」

とりあえず腕を抜こうとするが、あひるはぎゅっと抱き締めて放そうとしない。

「おやすみ、ふぁきあ」

(仕、仕方ない・・・のか?この場合・・・)

当惑するふぁきあとは対照的に、安心したあひるはすぐに寝息をたて始める。ふぁきあは眠れないままあひるの顔を見つめる。あひるは眠っているのだから、すぐに離れても良かったはずだが、ふぁきあはなぜかそうはせず、結局しばらくして少し風雨が弱まってからあひるの腕をはずし、少し離れて寝た。何かが引っ掛かっているような、もやもやとした気分を抱えたままで。


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