樫の幹に頭を凭せ掛け、座り込んだままのふぁきあの周りで小鳥が囀り始める。僅かに仰向いた顔を朝日が照らし出し、閉じたままの瞼に光を感じる。そろそろ立ち去らないと、こんな所に座り込んでいては人に見咎められる時間になっていた。自分のことはもうどうなってもいいという気分だったが、王子やあひるに迷惑をかけられない。ふぁきあは義務感に動かされてゆっくりと目を開けた。その目に飛び込んできたのは、梢の緑を抱いて広がる、この世で一番美しいとふぁきあが思う色。ふぁきあはあひるの瞳に抱かれているような気がした。心の奥まで光が射し込むのを感じた。傍らに置いていた剣を手に取り、ふぁきあは立ち上がった。はずみでこぼれた雫が頬を伝わり、輝いて落ちた。


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