クリスは小鳥の歌で起こされた。瞼に明るい光を、頬に新鮮な風を感じる。

ここはどこだろう?あの地下牢の中ではない。自分はあの後、どうしたんだったか・・・

「う・・・」

微かに呻いてまばたきし、腕を上げて光を遮ろうとするが、体全体がだるくて動きが鈍い。

「クリス?」

(えっ?)

今の声は・・・まさか、そんなはずは・・・

動悸が激しく打ち始める。

「おはよう、クリス」

おそるおそる目を開いて声の方を見る。
暗い牢の中で何度も思い描き、心に抱き締めていた眩しい笑顔を間近に見て、心臓が跳ね上がる。

「お腹空いたでしょ?昨日、結局食べなかったもんね。待ってて、今すぐ持ってくるから。あっそだ、隣にお兄様がいるから呼んでくるね」

「あっ・・・待っ・・・」

慌てて体を起こして傷の痛みに顔を顰め、掠れた声で呼び止めようとしたが、リンデはさっさと行ってしまった。
クリスは起き抜けに与えられたショックが醒めないまま、 呆然とその後姿を見送るしかなかった。


 

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