Glanz des Gold, Strahl des Silber 9



 
分身がびくっと跳ねて勝手に返事をしたが、声は一言も出なかった。レーネは扇状の長い睫を伏せがちに彼の顔を見上げ、返事を待っている。可愛らしい手がソレをしごくのを想像して、咽喉がからからになったが、辛うじてぎこちなくうなずいた。レーネは再び視線を落とし、一瞬静止した後、しなやかに片方の手を伸ばしてきた。

「うっ・・・!」

柔らかな指先が、先端に、ふわりと羽根のように軽やかに触れただけだ。ただそれだけで、電流が脚の付け根から脊髄を貫いて脳天まで走り抜け、宙に吹き飛ばされたような感覚にさらわれた。苦悶するように歯を食いしばり、太腿にぐっと力を入れて、そのまま達しそうになるのをどうにかこらえる。

「ご、ごめんなさい。痛かった?」

歯を食いしばったまま首を横に振った。咽喉の奥から荒々しい唸り声が漏れる。説得力ゼロなのは分かってるが、とてもじゃないがまともな文章などしゃべれる状態ではない。さっ、と引っ込められてしまった手に戻ってきて欲しかった―切実に―が、このまま続けられたら不面目なザマを晒してしまうのは目に見えている。人生で初めて、自分がどうしたいのか、心を決めかねた。

「私・・・ごめんなさい、ほんとに・・・」

おろおろとうろたえるレーネの、白い胸に咲いたピンクの花の辺りで、肩から流れ落ちた黒髪の一房がくるりと小さな渦を巻いて揺れる。

「ど、どうすればいい?」

まったく!こいつを不安にさせてどうする?俺に・・・俺の体に慣れてもらわなきゃならねぇのに。男らしく、覚悟を決めろ!
無理やり唾を飲み込み、言葉を搾り出した。

「続けろ・・・」

レーネは怪訝そうに美しい眉をひそめたものの、彼がそれ以上何も言わないのを見て、小さな白い歯で軽く唇を噛み、素直に従った。息を吸い込み、衝撃に備えて身構える。肌が接する直前、レーネはわずかにためらい、ちらっと彼を見上げた。彼は彼女を睨みつけたまま身動きできなかったが、長く待たされることはなかった。優美な手がそうっと彼に触れ、ゆっくりと輪郭をなぞる。今度は棹の部分を。声を漏らすまいと顔を歪めている彼の様子を伺いながら、レーネは、浮き上がった筋に沿って、優しく静かに手を滑らせていった。

「そう・・・そうだ・・・それでいい・・・」

レーネがまた怖気づいてしまわないよう、力づけるために言ったのに、自分の言葉に自分で興奮した。その興奮が伝わったのか、蒼い瞳がちりちりと銀色に光り、レーネの息も心なしか荒くなった。手の動きがわずかに大胆になり、濃い体毛に覆われた根元付近まで徐々に降りて行く。湿った茂みを細い指がじらすようにかすめ、深く息を吸い込んだ途端、その手は―ずっしりと重く垂れた袋には触れることなく―するりと逃げ、傘の下辺りを指で挟んで軽く爪を立てた。

「硬いのね・・・」

セクシーなかすれ声。俺を欲しがっているように聞こえるのは、願望のせいか?

「それに、とっても熱い。こういうものなの?重くない?」

たとえまともにしゃべれたとしても、その質問に答えるのは難しかった。もちろん、常時こうなってるわけじゃないが、レーネといる時は、ほぼこれに近い状態だったのは事実だったから。

「こっちは、柔らかい・・・」

今度は傘の部分に指先を載せ、表面にゆっくりと横向きの螺旋を描いている。お前の中に、傷つけないようにしっかり入れるためだ、という言葉を、唾と一緒にごくりと呑みこむ。先端から先走りの液が滲み出てきた。

「すべすべして・・・」

レーネが、まるでもっとよく見ようとするかのように身を乗り出したので、とっさにがしりとその肩を押さえた。もし、この状態で吐息でもかかろうものなら、綺麗な顔に思い切りぶちまけてしまう。ここは軌道修正するしかない。

「もういい。死にそうだ」
「あ、ごめ・・・」

それ以上言わせず、華奢な両手首を、がし、と掴んで引き上げた。先端をつんと尖らせた形の良い胸が、彼に向かって剥き出される。はっと息を呑んだ白い女体を、背後の赤いスェード地に押しつけながらのし掛かり、柔らかなふくらみに鼻をこすりつけた。甘酸っぱい匂いを肺いっぱいに吸い込み、思い切り舐め上げる。

「あん・・・」

鼻にかかった甘い声を上げ、ソファの背に頭をのけぞらせて、レーネが身をくねらす。反射的に、もがく獲物を封じ込めるように、体で押さえつけた。しっとりした胸の谷間から咽喉元の窪みまで舌を走らせ、噛み付くように唇を強く押し当て、吸い上げる。

「あ!」
「・・・甘いな・・・お前は・・・」

甘くて、柔らかくて、温かい・・・激しい興奮と同時に、心地良い安らぎに包まれる。信じられないほど素晴らしい。女の体が、これほど感動的なものだったとは。

彼は、無論、童貞ではなかった。健全な好奇心から、何人かの相手と試してみたことがあり、しかも、いずれも一般的に言ってイイ女で、経験も豊富で、それなりに楽しい時間を過ごした。だがそれでも、こんな風に感じたことは一度も無かった。いつも、生理的に達しはするものの、何かが違うと感じ―それはたぶん、自分が未熟なせいだろうと思っていた―そのうちに飽きた。ここ数年は女に無闇な衝動を感じることもなくなり、実際に抱きたいという気も起きなくなっていた・・・レーネに逢うまでは。

小さな手が優しく、だが誘いかけるようになまめかしく、肩から背にかけての隆起をなぞっている。いつのまにか彼は、彼女の腕を放し、たおやかな胸を揉みしだいていた。新雪に輝く峰のように気高くそびえる乳房の、ふわりと吸い込まれるような柔らかさに、つい力を入れ過ぎてしまい、レーネが身を捩って彼の背に爪を立て―それ自体は痛くも痒くもないが―小さく呻き声を上げた。慌てて放したものの、きつく掴んだ時の意外なほどの弾力はしっかりと指に焼き付いて、じりじりと欲望を刺激した。

乳首の下の心臓に近い場所に顔をすり寄せ、なだめるようにキスを繰り返す。強く激しい鼓動を唇に感じ、本物の生きたレーネを腕に抱いていることを実感して、震えるほどの幸福を感じた。手に馴染むウエストラインを愛撫しながら、滑らかな肌を舌先でちろちろと味わう。心急くまま斜面の上へと這い登り、膨らんだ蕾に舌が突き当たると、彼女がびくりと震えた。腰を包む手に力を籠め、ぐいと手前に引き寄せる。丸く張りのある尻の、懐かしいような手触りに胸が熱くなり、またしても強く掴んでしまったが、レーネは短くあえぎ声を漏らしただけで、文句は言わなかった。

そのまま、なよやかな腰をしっかりと抱え込み、可愛らしい乳首を素早く口に捕らえて吸い上げると、レーネは甲高い叫び声を上げ、彼の肩を押してわずかに体を浮かせるように逃げ腰になった。そのささやかな抵抗を軽々と抑え込み、夢中になって口の中のものを舌でつつきまわし、転がす。

「あ・・・あ・・・イヤ・・・」

切れ切れの喘ぎ声を漏らしながら、レーネが彼の下で激しく身悶えする。

「イヤか?」

唇を離し、唾液にまみれて仄かな明かりにてらてらと光る乳房にふうっと息を吹きかけると、レーネはたまりかねたように彼にしがみついて、首を強く左右に振った。

「イヤ・・・やめないで・・・」

思わず動物的な笑いがこぼれた。

「やめねぇよ・・・だが・・・」

弾む尻を撫で回していた手を太腿に滑らせると、彼が何も言わなくても彼女は自然に脚を開く様子を見せた。彼女が無意識のうちにか、彼を受け入れようとしていることに胸が熱くなったが、残念ながら、彼の並外れて大きな体を割り込ませるには、まだ到底十分ではない。片手で一方の太腿をむんずと掴み、ぐいと持ち上げた。

「先に進もう」

持ち上げた腿の裏に手を回して高々と上げさせたまま、仰け反るような姿勢になったレーネに息をつかせる間も与えず、暗い色の茂みに覆われた恥丘をごつい手で撫で下ろし、秘所を割った。途端に悲鳴のような喘ぎ声が上がったが、ザックスは、熟れた果物のようにいっぱいに溢れ出してきた果汁に完全に気を取られていた。

俺を待っててくれた。

その想いで頭が埋め尽くされた。何よりも彼女の体が、彼を待ち焦がれる気持ちを、雄弁に物語っている。ほとばしる熱情に衝き動かされ、とろりと蜜をしたたらせる割れ目に喰らいつき、舌を差し込んで嘗め回した。

「あっ、あ、ああ!」

レーネが狂ったように身をくねらせ、彼を振り落とさんばかりに暴れた。のたうつ下半身をしっかと掴み、獲物をむさぼる獣のように、口の周りを蜜まみれにして、禁断の実の中身をがつがつとしゃぶり尽くす。奇妙な懐かしさを惹起する、甘くスパイシーで独特な彼女の匂い―例えて言うならシナモンのような―が鼻腔を満たし、いっそう興奮を掻き立てた。最も敏感な核を舌で探り当て、ざらざらした舌の先で蜜をまぶすようにゆっくりと愛撫する。レーネは声にならない叫びを上げてびくんと痙攣した後、唐突にもがくのをやめた。舌なめずりしながら口を離して見上げてみると、彼女は既に息も絶え絶えといった様子で、雪のように白い肌を顔から胸の辺りまでほんのりと上気させ、ひくひくと手足を震わせてソファに身を預けていた。

何もかも、あまりにも夢に見たままで、夢の続きのような気がしていた。夢と現実が溶け合い、境界が無くなる。彼女を包み、彼女に包まれて、全てが一つになる世界へ・・・今すぐ・・・

ザックスは意識の外へ薄れゆく自制心を必死で引き止めようとした。例えどれほど困難であろうとも、どうしても今回だけは、ゆっくり、優しくしなければ。二人の最初の交わりが素晴らしいものだったと、彼女にも思ってほしい・・・

もしできるなら、つがいの相手を得た雄の動物のように、猛々しい原始の悦びを、ほとばしるままにぶつけたかった。いつか夢で見たように、後ろから一気に押し入り、思うさま突きまくりたい。彼女の体は始めから彼のために創られたかのようにしっくりと彼の体とはまり、激しく揺れ動いても、まるでそれ自体が引き寄せ合っているかのように、決してずれたり外れたりすることはない。一番敏感な肌が絡み合うその感覚が、はっきりと感じられる。うっすら色づいた柔らかな尻に、濃い体毛を擦り付け、腰を躍らせると、彼女はすらりとした背を仰け反らせ、長い黒髪を乱して、切なげな声を上げる・・・

よせ!それでなくても抑えが利かなくなりそうなのに、妄想で加速させてどうする。

ああ、だが、今すぐ繋がりたい・・・熱く火照った楔を、彼女の体の最も神聖な場所に―それが納まるべき場所に深々と打ち込み、ずっと埋めていたい。そこにぴったりと納まることは分かってる。そう、分かってるんだ・・・優しく、けれど情熱的に、悦びに満ちて迎え入れられ、熱っぽい潤いに包み込まれて、その奥に秘された、二人だけの夢うつつの世界へといざなわれる・・・めくるめく熱い渦に飲み込まれ、眩暈のするような興奮の嵐の中で、すべてが一つに混ざり合い、溶け合って、遥かな高みへ・・・そして、深い、深い快楽の海の底へ・・・

思わず唸り声を漏らすと、閉じていた白い瞼がさっと開き、深い蒼の瞳が、誘い込むような光を湛えてきらめいた。花びらのような唇から、もっと欲しいと訴えるような、かすれた溜息が漏れる。

それだけでわずかに残った理性も全て吹っ飛んだ。華奢な両脚を力任せに持ち上げてぐいっと押し広げ、熱く疼く欲情の矛先を、つやつやと妖しく光る花の中心に押し付ける。そのままいつも通り一気に奥まで滑り込もうとして強力な抵抗に阻まれ、と同時に、絹を裂くような悲鳴が部屋中に響き渡った。その瞬間、頭の中にある事実が閃き、そして彼は、できるとは思わなかったことを―凄まじい衝動に手綱を掛け、己を引き止めるということを―した。

「レー・・・ネ・・・」

そうすんなりとは入れてもらえないかもしれない、ということも、全く予想していなかった訳ではない。極限まで怒張した彼のものを受け入れるのは、たぶん、『普通の女』には大変だろうとは思っていた。別に自慢するわけではなく、体の大きさに比例して、パーツも大きいというだけのことだ。ただ、これは・・・これほどに濡れて、しっかり用意ができているように見えるのに、壁にぶち当たったように中に入れないというのは・・・

「お前、まさか・・・処女か?」


 

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