Glanz des Gold, Strahl des Silber 11



 
ねじ込むような鋭い快感に身の内を焼かれながら、逞しい腕をぎゅっと握り締めた。

「レーネ?」
「分かってるの。大丈夫だって・・・私達は、その・・・ちゃんとぴったり合うんだって。だからお願い、やめるなんて言わないで」

指先に、彼の腕の震えを感じた。

「俺だってやめたくねぇが、いやその、そうじゃなくて・・・」

またしても幾つか罵り言葉を吐いてから、ザックスは落ち着きを取り戻そうとするように息をつき、そっと太い指先で彼女の顔に触れた。

「俺は、お前に、無理させたくねぇんだ。どうすりゃいいのかはよく分からんが、とにかくその、ゆっくりやろう。時間はたっぷり・・・」
「もう待てないの!」

むせぶような懇願になってしまったけれど、気にしてはいられなかった。はっと目を見開いたザックスの太い首に素早く手を回して縋りつく。繋がった箇所が擦れ合って鋭い刺激を生じるのにもかまわず、毛深い胸に乳房を摺り寄せ、金褐色の頭をしっかりと掻き抱いた。ザックスは彼女の髪に顔を埋め、背が折れそうになるほど強く彼女の体を抱き締めた。

「くそ、どうして俺がお前に抵抗できる?俺は・・・俺はお前の虜だ」

耳元で炎のような口調で囁かれ、レーネはまばたきして、こみ上げた涙を落とした。

「そうだ。もう待てない、これ以上は」

ふいに体を離されて空気が流れ込む。彼女が何を言う暇もなく、厳しい褐色の目が彼女を覗き込んだ。

「深呼吸しろ」
「え?」
「早く」

険しい命令口調に、つい言われたとおりに従った。深呼吸ができるような状態ではないものの、なるべくたくさん息を吸い込み、吐き出す・・・と、彼が彼女の呼吸に合わせるように腰を上下に動かした。

「あ・・・」

痛みと快感の入り混じったさざなみが全身を走る。我に返った時、彼がさっきより深く彼女の中に入っていることに気がついた。

「もう一度」

言われるままに再び繰り返す。彼はさらに侵入を深めた。

「ああ・・・ザックス・・・」
「いいぞ。もっとだ」

彼もまた興奮し始めているのが、声の調子で分かる。彼女の内部を押し広げているものはさっきからずっといっぱいに強張ったままで、何も変化は無いけれど。

「やれよ。ほら」

乱暴な口調だったけれど、気にはならならかった。それどころか、わくわくするような高揚さえ感じた。私が彼を包み・・・平静を失わせている。彼は低く不穏な唸り声を上げながら、血走った目で彼女を睨みつけ、それでも彼女が先導するのを辛抱強く待っていた。柔らかい皮膚を擦られる苦痛は確かに存在するのに、せっぱ詰まった興奮は、それを遥かに凌駕していた。行為を繰り返すにつれ―彼に満たされるにつれ、胸をいっぱいに満たしていく喜びに驚嘆しながら、遂に彼の巨大な欲望を全部、体内に呑み込んだ。

「すごい・・・ほんとにできた・・・」
「安心するのは早い」

その言葉の意味を問おうとした途端、彼が彼女を擦りながら滑り出た。痺れるような感覚と、一瞬の喪失感に身を委ねる間も無く、彼は素早い動きで再び身を沈めた。

「あ、ああ・・・」

思わずかすれた叫びを上げて仰け反り、体を強張らせた。感電したみたいに、体が動かない。

「大丈夫か?」

気遣わしげなしゃがれ声が耳元で聞こえた。声を出して答えることはできなかったけれど、どうにかうなずいた。

「じゃあ、見ていろ」

重いまぶたを押し開け、彼を見上げた。

「何・・・?」
「見るんだ。俺達が繋がってるところを」

一気に目が覚めた。ごくりと唾を飲み、目の前の男を―彼女と繋がっている男を―凝視する。深くとろける褐色の瞳が、金色に光っている。

「さあ」

まるで当然のことのように強くうながされ、レーネはゆっくりと顔を起こした。無精髭に覆われたごつい咽喉から、柔らかそうな体毛に覆われた肉厚な体躯に沿って視線を下げる。おへその上辺りで一度薄くなった金色の毛は、そこから再び下に向かって深い茂みとなり・・・黒い体毛と絡み合っていた。

「あ・・・」
「見てろよ」

目を逸らすことなどできなかった。茂みの間から、彼女の液にまみれてぬるぬると淫靡に光る太いものが、ずるりと現れ・・・かと思うと、再び力強く押し込まれる。決して乱暴ではなく、けれども躊躇なく、堂々と、自信に満ちて。彼は見せつけるように―彼の存在とその感覚を彼女の意識と肉体に刻みつけるように、しっかりした動きで挿入を繰り返す。両脚の間に異物が我が物顔に出入りする大胆な光景と、打ち寄せる快感で、眩暈がした。己の内部が勝手に収斂して、彼を締めつける。ザックスが獣じみた呻き声を上げた。

「ザックス、私・・・頭がおかしくなりそう・・・」
「俺はもうなってる」

吠えるように答え、ザックスはこらえきれないように速度を増した。

「悪い。もう限界だ」

えっ?と思った途端、下半身が浮き上がり、高々と抱え上げられた両脚は、あっという間に分厚い肩の上に載っていた。角度が変わり、彼の先端が、彼女の奥深く、不思議なポイントに強く押し付けられている。言葉どころか息も出せなかった。そして彼は凄まじい勢いで突き始めた。

「あっ・・・あっ・・・あっ・・・」

屈強な肉体が激しくぶつかってくるたびに口から漏れるのは、声というより、かすれた軋み音のようだった。この、いかがわしくも純粋な交合によって彼女の体から発せられる、根源的な響き。がくがくと揺さぶられる乳房の振動や、擦れ合う接合部のたてる湿った音と同じく、この驚異の―そして真実の―瞬間に二人が生み出す、濃密で野生的なエネルギーの放散。

自分が、こういった悦びについて、まったく無知で無垢だなんてフリをするつもりはない。それでも、初めての行為でこんなに感じてしまうなんて・・・

おおよそこれまでに本で読んだり、友達との会話から聞きかじったりした話では、最初の時というのは、少なからず苦痛とぎこちなさを覚えるもののようで、それは覚悟していた。それなのに彼とこうするのは最初からとても自然で・・・恐れどころか、ためらいも戸惑いも感じなかった。どこに向かっているのか、何が欲しいのか、ちゃんと分かっていたし、彼が欲しているものさえ、分かる気がした。断固とした侵入がもたらす引き攣るような痛みは徐々に弱まり、意識を霞ませる薄紅の霧の向こうにいつしか溶け去っていった。五感が麻痺したように―それとも研ぎ澄まされたように?―二人の周囲から他の全てが消え、彼の熱だけを感じる。そうして、甘く意識にまとわりつく欲望の霧は、朧げな認識の光の下で、体内深くうごめく得体の知れないものと混じり合い、少しずつ膨れ上がって何かを形作ろうとしている。

「んっ・・・あ、あぁ、ザッ・・・」
「ああ、すごい、素敵だ、美しい・・・」

がっちりと彼女の腰を掴み、狂ったようにスラスト運動を続けながら、ザックスは切れ切れにとりとめも無い言葉を呟いている。二人の体から滲み出た様々な体液の生々しい匂いが混ざり合い、鼻腔から脳へ染み込んでいく。まるで、そうしなければ死ぬというような勢いで叩きつけられる彼の情熱を受け止めながら、レーネは、圧倒的な強さで彼女を押し包む大きなうねりに身を委ねた。言葉では表し尽くせない感覚が全身を満たしていく。

「あ・・・あ、いい・・・」

感動で胸がいっぱいで、息もつけないほど苦しくて、体中に炎が燃えているみたいに熱くて、そして・・・気持ち良い。

「レ・・・ネ・・・」

怪我をしている上腕を無意識に避け、彼女の腰を掴む大きな手をそっと撫でる。不意に彼の右手が腰を放し、彼女の左手に指を絡めて握り締めた。冷たい銀の指輪が、二人の肌の間で熱を放つ。体が勝手に動き、腰を回すように彼に押し付けた。彼の左手にぐっと力が入って彼女のお尻に太い指が食い込み、動きがさらに速くなる。内部の襞が、内に呑み込んだ巨大な塊の凸凹の表面と強烈な摩擦で抱き合い、しぼり上げるように痙攣し始めた。片手と腰でしっかりと繋がれ、ひたむきな熱に包まれて、眩い光の射す方へ昇り詰めて行く。硬い親指がすっと移動して花びらの縁をなぞり、荒々しい行動とは対照的な優しさで敏感な核をまさぐった。と、次の瞬間、体の奥で密やかに膨らみ続けていたものが一気に吹き上がり、爆発した。

「あっ、あぁ!!」

一瞬、瞼の裏に、黒い森に囲まれた灰色の湖が広がり、そして真っ白になった。地を揺るがす雄叫びを上げ、彼が凄まじい勢いで彼女の子宮を圧迫する。その、連続的で峻烈な圧力が彼の放出によるものだと気づいた時、彼女は知らず知らず、心の内で呟いていた。

おかえりなさい・・・あなた。

時が消えた。たまゆらも、数世紀の時間も、一つになった。


 

 続き Fortsetzung

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