さっきまで裏手の湖の方から聞こえていた歓声と水音が止んだ。
リンデはほぼ仕上がった縫い物を置いて立ち上がり、棚から洗いたてのリネンを取り出した。
と同時に、素っ裸のふぁきあが駆け込んできた。「おかあさん!ちょっとおよげるようになったよ!おとうさんがすごいぞって。おかあさんにもみせてあげる!」
リンデは暴れるふぁきあを捕まえてごしごしと拭いてやりながら柔らかく答えた。
「また今度ね。今日はもういっぱい練習したから、おやつを食べたらちょっとお昼寝しなさい」
ふぁきあは素直に頷いた。
「うん。あのね、すぐにもっとじょうずになるから、そしたらおかあさんもいっしょにおよごう?」
リンデは微笑み、ふぁきあに頭から服を被せる。
「おかあさんは泳げないの。だから岸から見ててあげる」
ふぁきあがもどかしげに服を引っ張り、襟首から頭を出す。
「えー、およげないの?おとうさんにおしえてもらえばよかったのに」
「そうね」教えてはもらった。けれど泳げると言えるほどにはならなかった。なぜなら、いつもほとんど練習しないうちに・・・
謎めいた表情の母を見て、ふぁきあはちょっと首をかしげてから、一人納得したように頷いた。「でもだいじょうぶだね。おとうさんはおよぐのすごくうまいから、おぼれてもたすけてくれるよ」
突然リンデは思い出した。ずっと昔、そんな約束をしたことを。
にっこりと笑ってリンデは答えた。「ふぁきあの言うとおりよ。さあ、おやつにしましょう」
ふぁきあは得意げな笑顔でテーブルに駆け寄った。
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※隠し扉2件あり※